2014年にロシアに併合されたウクライナ南部のクリミア半島で、今月に入ってから爆発が相次いでいる。爆発はウクライナ側の攻撃によるものとの見方が強く、クリミアは新たな “戦場 “になりつつある。クリミアは軍事的な要衝であると同時に、ロシアのプーチン大統領の政治的な「成果」の象徴でもあり、ロシア軍が報復攻撃を強化する可能性もある。
クリミアでは今月9日、同国西部のロシア空軍基地で最初の爆発が発生。16日にも北部のヤンコイにあるロシアの弾薬庫で爆発が起き、ロシア国防省はウクライナ側による妨害工作と主張した。同日、中部の軍用飛行場でも爆発が起きたとされる。
ウクライナ側は発表していないが、ウクライナ大統領府顧問のポドリャク氏は、爆発へのウクライナ側の関与を示唆した。また、同氏は16日、英国メディアに対し、「今後2〜3カ月間、同様の攻撃が続く可能性がある」と述べた。また、ゼレンスキー大統領は同日、クリミアなどの住民に対し、ロシアの弾薬庫や司令部などに近づかないよう呼びかけた。
米シンクタンク「戦争研究所」は16日付の報告書で、「ヤンコイはウクライナ南部へのロシア軍や装備の輸送拠点として機能していた」と指摘した。報告書は、今回の爆発はウクライナ軍がチェルソン州など南部の奪還作戦の一環である可能性が高いとしている。英国防省も17日、「ロシア軍司令部は後方基地として機能してきたクリミアの情勢悪化に懸念を強めるだろう」と分析した。
ウクライナの戦略は、クリミア攻撃でロシア軍の兵站に打撃を与え、同時にロシアの注意をクリミア防衛に向けさせ、ロシア軍の前線部隊を分散させることにあるようだ。
クリミアは、2002年のウクライナの政変をきっかけにロシアに併合された。クリミア併合は、ロシア国民の愛国心を高め、プーチンの支持率を90%近くまで押し上げた。同国南端のセヴァストポリにはロシア黒海艦隊の司令部が置かれている。